最高裁判所第二小法廷 昭和35年(オ)15号 判決 1963年6月07日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人らの負担とする。
理由
上告代理人沢克巳の上告理由第一点について。
訴外株式会社日証に対し訴外田口義雄に代つてその債務を弁済したのは控訴人金城であつて、控訴人立石は控訴人金城に対しその弁済資金を貸与したにすぎない旨の原審の判断は、証拠関係に照し、相当であり、原審が右の事実に基づいて所論冒頭引用のとおり判示したのは正当である。所論は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断および事実の認定を非難するか、独自の見解に立つて原判決を攻撃するに帰するから、採用できない。
同第二点について。
通謀虚偽の売買契約における買主が当該契約の目的物について第三者と売買予約を締結した場合において、その目的物の物権取得の法律関係につき、予約権利者が民法第九四条第二項にいう善意であるかどうかは、その売買予約成立の時ではなく、当該予約完結権の行使により売買契約が成立する時を基準として定めるべきである旨の原判示は、同条の法意に照し、正当である。所論引用の大審院判決は本件に適切でなく、所論は右と異なつた見解に立つて原判決を攻撃するに帰するから、採用できない。
同第三点について。
控訴人金城は昭和二九年一一月頃被控訴人が占有中の本件家屋に無断で侵入占拠し、引き続きこれを占有しているのであつて、右の占有は不法行為によつて始まつたものである旨の原審の判断は、証拠関係に照し、相当である。所論は、原判示に副わない事実を前提とし、独自の見解に立脚し、原審の適法にした事実の認定を非難するに帰するから、採用できない。
よつて、民訴三九六条、三八四条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 池田克 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一 裁判官 山田作之助 裁判官 草鹿浅之介)